今日は「運動」のメカニズムについてお話したいと思います。
どのようにして私たちは「運動」をしているのでしょう。
①感じる
外界からの情報は各感覚受容器でキャッチして脳へ送られます。
1.見る(視覚):網膜→後頭葉の視覚野
2.聞く(聴覚):コルチ器→側頭葉の聴覚野
3.触れる(体性感覚):マイスナー小体・メルケル盤・ルフィニ小体・自由神経終末→頭頂葉の感覚野
上記のように見たり、聞いたり、触れたりした情報を脳のそれぞれ違う部分で感じとっています。
その情報は頭頂連合野で感覚統合されます。
主に脳の後ろの方で感じた情報を脳のてっぺんのちょっと後ろでまとめているというイメージです。
②考える
「感じた」情報をもとに前頭前野で「考えます」
*前頭前野の働きについては「各分野の専門性」のページに記載してますので参照ください。
まとめられた感覚の情報は脳の前の方で判断され、そして何を実行すればよいか考えます。
③運動の実行
脳の前の方で考えて決められたものが脳のてっぺんで実行されるために指令が出ます。
1.一次運動野:随意運動(自分の意志で行う運動のこと)の実行
2.補足運動野:自発的な行動。体に近い部分。記憶に基づく。
障害される→自らすすんで手足を動かしたり、言葉をしゃべったりしなくなります。
3.運動前野:外界からの情報(視覚・聴覚など)に誘導されて運動の準備をします。
障害される→熟練した運動の障害
*一次運動野が運動を実行しようとするとき、補足運動野と運動前野がその運動が適切にできるようにプログラムを立ててくれます。
・高次運動野から一次運動野へ運動のプログラムが渡り実行するときに最終的な調整をしてくれるのが大脳基底核と小脳です。
4.大脳基底核:運動の開始や停止をスムーズにしたり、運動がなめらかになるように調整をします。
5.小脳:運動の方向、タイミング、強さ、平衡感覚などを調節します。
これだけの手助けがあって、一次運動野から上位・下位運動ニューロンへと伝わり、それが筋に伝わって実際の運動を行うことができます。
上記の過程のどこに原因があって、どんな粗大・巧緻・構音運動がうまくいっていないのか考えてみることが大切です。
〇手先が器用に動かせていないということがお困りごとのお子さまがいたとして、
その原因が発動性の問題なのか、考えるところ(判断・注意・集中力など)に問題があるのか、目と手の協応なのか、力の加減なのか、低緊張なのか、一次運動野までの皮質からの運動プログラムで手指ごとに分離して行えないのか、リハーサル量がそのお子さまには足りておらず手続き記憶(大脳基底核・小脳)から引っ張り出せていないのか…その原因はさまざまです。それを療育の中でアセスメントしてお子さまに適した方法を専門のチームで考えていきたいと思っています。